暗号資産は誰が、何のために、どのような権限で発行しているの?

暗号資産と現実のお金は違うというイメージ Web3.0

はじめに:お金には「発行主体」と「信用の裏付け」がある

私たちが普段使っている「お金」といえば、日本円や米ドルなどの法定通貨です。これらは国が発行主体であり、その価値は「国の信用」によって保証されています。
一方で、暗号資産(仮想通貨)は国が発行しているわけではなく、ブロックチェーンというネットワークを使って誰でも参加できる形で発行・管理されています。ここが大きな違いです。


法定通貨の発行:日本銀行がお金をつくる仕組み

日本円を例にとると、日本円は日本銀行(日銀)が発行しています。
日銀は政府の機関ではありませんが、法律に基づき「唯一の銀行券発行権」を持っています。つまり、日本銀行券と呼ばれる紙幣は、日銀が法律の枠組みの中で発行し、その価値は日本国という国家が「信用」を担保しています。


暗号資産の発行:中央管理者がいない仕組み

暗号資産は、ビットコインに代表されるように「特定の国や企業」が発行しているわけではありません。
基本的には、次のような特徴を持っています:

  • 発行主体が分散している
    中央銀行のような「1つの組織」が存在せず、世界中のネットワーク参加者(ノード)によって管理されます。

  • ブロックチェーン上のルールによって数量が決まる
    ビットコインなら「最大2100万枚まで」というルールがプログラムに書かれており、人間の意思で勝手に増減できません。

  • マイニングやステーキングを通じて発行される
    ネットワークを維持するための報酬として、新たな暗号資産が参加者に配布される形で発行されます。

(マイニングについてはコチラ

(ステーキングについてはコチラ


暗号資産は何のために発行されるのか

暗号資産の発行目的は、法定通貨とは異なります。大きく分けると以下の目的があります。

  1. 価値の交換手段として
    ビットコインのように「インターネット上のデジタル通貨」として送金や決済に使われるもの。

  2. ブロックチェーンの利用権・ガス代として
    イーサリアム(ETH)は、ネットワークを利用してNFTを作ったり、DeFiを使う際に手数料(ガス代)として使われます。

  3. プロジェクトのガバナンス権限として
    DAOやDeFiなどでは、トークンを保有している人が投票して運営方針を決める場合があります。

  4. 資金調達の手段として
    新しいブロックチェーンプロジェクトがICO(Initial Coin Offering)を通じて独自トークンを発行し、開発資金を集めるケースがあります。


暗号資産の発行権限は誰が持っているのか?

ここがポイントです。暗号資産には中央銀行のような「発行権限を持つ主体」が存在しません。
代わりに「ブロックチェーン上のプロトコル」がその役割を担っています。つまり:

  • 発行数量、タイミング、配分はすべてプログラムで定義されている

  • 誰かが恣意的に増発できない

  • ネットワークに参加する全員が同じルールで監視している

この透明性が、暗号資産の信頼性の基盤になっています。


日本銀行が発行するお金との比較

項目 日本円(法定通貨) 暗号資産
発行主体 日本銀行 なし(ネットワーク)
信用の裏付け 国家の信用 暗号技術とネットワークの信頼
発行量 経済政策に応じて調整 プログラムで固定・またはルール化
取引の仲介 銀行や決済事業者 不要(P2P)
法的強制力 あり(支払いに使える) なし(任意で利用)

暗号資産はどうやって発行されるのか(仕組みの流れ)

  1. ブロックチェーンのルールが決まる
    例:ビットコインなら、10分ごとに新しいブロックが作られる際、報酬として新しいビットコインがマイナー(マイニングする人)に配布される。

  2. ネットワーク参加者が計算作業(マイニング)を行う
    膨大な計算をして新しいブロックを作ることで、その報酬として暗号資産を得る。

  3. POS(Proof of Stake)ではステーキングで新規発行
    自分のトークンを預けてネットワーク運営に貢献すると、その報酬としてトークンがもらえる。

  4. ICO(暗号しさんによる資金調達)などによる発行
    プロジェクトが新しいトークンを作り、投資家に販売することで発行が進む。


暗号資産と法定通貨が共存する未来

暗号資産は法定通貨を完全に置き換えるものではありません。
国が管理するお金(法定通貨)は、税金の支払いや公共サービスの基盤として不可欠です。
一方で、暗号資産は国境を越えて使えるデジタルマネーとして、投資・決済・金融サービスなどの新しい世界を広げています。
特に、Web3.0時代では暗号資産がインターネット経済の基盤となると考えられています。


まとめ

  • 日本円は日本銀行が法律に基づいて発行する国のお金。信用の裏付けは国家。

  • 暗号資産はブロックチェーンネットワークが発行。信用の裏付けは暗号技術と分散管理。

  • 発行量は中央銀行がコントロールできるのに対し、暗号資産はプログラム上で制御される。

  • 両者は対立関係ではなく、異なる役割を持ち、今後は共存・補完関係に向かっていくと考えられる。